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ベストセラー小説の書き方 ディーン・R・クーンツ著 大出健訳

この書籍は呪いだ。それはこの書を生半可にも、読みこなしたつもりになる者へのトラップだ。作品を著述する方法論が書かれていると勘違いする者への罠になっている。

クーンツ自身は、作品は作者に委ねられるもので、その作者でなければその作品が書けない、そうした作品が出版業界を沸かし、ファンを引き寄せる、と書いている。以前読んだ、題材同様の他者の書籍には、作品は読者を意識し、対話しろ、と書いてあったが、そんな低次元のことはこの書籍では述べていない。ここに書いてあるのは、読者にサービスをし、思いやりを持て、と述べているのみで、対話という言葉が低次に見えた。

同時に、読書するべき、という世間一般の浅薄な考え方を呪っている。読書は大切だ!深味のある人間形成に欠かせない!そうした謳い文句への警鐘にもなっている。順番はまったく逆で、本は読みたいから読むもので、その本が読んでつまらなければ、読むのは止めて本を閉じろ!とさえ言っているようだ。元来の読書の楽しみ方まで示唆している。

この呪いを解く方法はひとつだけ。途中で閉じずに読める本を片っ端から読んで読みまくるのだ。そうした物語はきっと、プロットがしっかりしており、形容詞だけでない人物評価や背景が書き込まれた、読み応えのある本なのだ。

書きたいものを書くことと、読みたい本を読むこと、は陰と陽だと、初めて分かった、深みのある本であった。